任意売却における抵当権消滅請求とは?概要や代価弁済との違いについて解説

任意売却における抵当権消滅請求とは?概要や代価弁済との違いについて解説

この記事のハイライト
●不動産を取得した第三者が債権者に対して抵当権の抹消を求める手続きを抵当権消滅請求という
●抵当権消滅請求と代価弁済では誰が主導権をもって手続きを進めていくかが大きく異なる
●抵当権消滅請求は不動産が競売にかけられてしまう前に行う必要がある

住宅ローンの返済が困難になり、任意売却を検討される方もいらっしゃるでしょう。
任意売却をするには債権者の同意が必要であり、同意を得られなければ実行することができません。
それでも任意売却をしたいという場合は、抵当権の消滅を求める「抵当権消滅請求」を行うことができます。
今回は抵当権消滅請求とは何か、代価弁済との違いや請求時に意識したいポイントについて解説します。
神戸市北区や須磨区で任意売却を検討されている方は、ぜひ参考になさってください。

任意売却における抵当権消滅請求とは

任意売却における抵当権消滅請求とは

住宅ローンの滞納が続くと、最終的に自宅は競売にかけられ、強制退去となる可能性があります。
競売を避ける方法として「任意売却」がありますが、これを実行するには債権者の同意が必要です。
同意を得られないと手続きを進められないので、状況に応じて「抵当権消滅請求」を検討する必要があります。

抵当権消滅請求とは

抵当権消滅請求とは、抵当権が設定された不動産を取得した方が、債権者に対して抵当権の抹消を求める手続きのことです。
抵当権が設定された不動産は「抵当不動産」と呼ばれ、不動産を取得した方を「第三取得者」と呼びます。
ローンを組んで購入した不動産を売却するには、まずその抵当権を抹消しなければなりません。
抵当権は債権者が不動産を担保にする権利であり、抹消するにはローンの完済が求められます。
ローンが完済できない場合、債権者の同意を得て任意売却を進める方法がありますが、同意が得られないこともあります。
このような場合に検討されるのが「抵当権消滅請求」です。
なお、抵当権消滅請求は抵当不動産を取得した方にのみ認められる権利であり、ローン契約者(債務者)は請求することができません。

抵当権消滅請求を検討するケースとは

抵当権消滅請求は、債権者が任意売却に同意しない場合に利用される制度です。
交渉が難航する代表的なケースとして、不動産に複数の抵当権が設定されている場合が挙げられます。
抵当権は1件だけとは限らず、第一抵当権・第二抵当権・第三抵当権と複数の債権者が関与していることがあります。
任意売却による売却代金は、第一抵当権者から順に配分され、後順位の抵当権者には配当が回らないことも少なくありません。
融資したお金が返ってこなければ任意売却をしても意味がないため、後順位になるほど抵当権の抹消に応じない可能性があります。
その場合は債権者と粘り強く交渉をする必要がありますが、交渉に時間がかかるほど競売のリスクが高まります。
競売を回避するための選択肢として、第三取得者が債権者に対し抵当権の消滅を求める「抵当権消滅請求」が活用されるのです。

債権者にも選択肢がある

抵当権消滅請求を行う際は、まず任意売却を予定している買主(第三取得者)に不動産の所有権を移転する必要があります。
所有権の移転が完了したら、第三取得者が債権者に対して抵当権の消滅を求める書面を送付します。
この書面を受け取った債権者には対応の選択肢があり、ひとつは抵当権の抹消に同意すること、もうひとつはそれを拒否して裁判所へ競売の申し立てを行うことです。
どちらの対応もしないまま2か月が経過すると、債権者は抵当権の消滅に同意したものと法律上みなされます。
つまり、第三取得者は正式な手続きを経ることで、債権者の反応次第では抵当権の抹消を実現できる仕組みになっています。

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抵当権消滅請求と代価弁済との違いとは

抵当権消滅請求と代価弁済との違いとは

代価弁済とは、債権者の提案に基づき、第三取得者が一定の金額を支払うことで抵当権を抹消してもらう制度です。
最初に、債権者が「この金額であれば抵当権を外します」と第三取得者に金額を提示し、双方で交渉を行います。
提示された条件に第三取得者が同意すれば、その金額を債権者に支払い、債権者は抵当権の抹消手続きを進め流流れです。
抵当権消滅請求と代価弁済は似ているようで仕組みに違いがあり、主導権を持つのが誰か、第三取得者として認められる条件、保証人や地上権取得者による対応の可否など細かい点で異なります。

違い1.主導権

抵当権消滅請求と代価弁済の大きな違いは、誰が主導権を持って手続きを進めるかです。
抵当権消滅請求の主導権は第三取得者にあり、抵当不動産を取得した第三者が債権者に金額を提示し、抵当権の消滅を請求します。
一方で代価弁済は、債権者のほうから第三者に金額を提示して抵当権を消滅させる制度で、主導権は債権者にあります。
抵当権消滅請求は第三取得者が積極的に動ける制度であるのに対し、代価弁済は債権者側の意向に大きく左右される点が特徴です。

違い2.第三者取得者になれる方の条件

抵当権消滅請求は、相続で不動産を取得した場合を除き、取得の経緯にかかわらず基本的に誰でも利用できる制度です。
売買や贈与、財産分与などによって取得した方は、第三取得者として抵当権の消滅を請求することが認められています。
一方で代価弁済を利用できるのは、所有権や地上権を「売買」によって取得した方に限られます。
相続や贈与、財産分与などのケースでは、代価弁済によって抵当権を抹消することはできません。

違い3.保証人による行為

代価弁済では、債務の保証人が抵当不動産を購入した場合でも、債権者から抵当権の抹消に必要な代価を求められることがあります。
このような場合は、保証人であっても代価を支払えば抵当権を抹消することが可能です。
一方で抵当権消滅請求の場合、保証人がこの制度を利用して抵当権の抹消を請求することはできません。

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任意売却で抵当権消滅請求をするときのポイント

任意売却で抵当権消滅請求をするときのポイント

ここまで解説してきた内容を含めて、最後に抵当権消滅請求を行う際のポイントを確認しておきましょう。

債務者は抵当権消滅請求ができない

抵当権消滅請求を行えるのは、抵当不動産を取得した第三者に限られており、債務者自身がこの手続きを行うことはできません。
これは、債務者が請求して抵当権が抹消されてしまうと、債権者にとって担保を失うという不利益が生じるためです。
債務者が抵当権を抹消してもらうには、基本的には住宅ローンを全額返済することが前提となります。

抵当権消滅請求にはみなし承諾がある

抵当権消滅請求を行う際には、抵当不動産を取得した第三者が、債権者に対して正式な書面を送付します。
書面を受け取った債権者は、抵当権の抹消に応じるか、拒否して競売の申し立てを行うか、いずれかを選択しなければなりません。
もし債権者が抹消に応じず、2か月以内に競売の申し立てを行わなかった場合は、抵当権の抹消に同意したものとみなされます。

抵当権消滅請求の時期を見極める

抵当権消滅請求を行うタイミングも重要です。
住宅ローンをすでに完済している場合は、法務局で所定の手続きを行うことで、速やかに抵当権を抹消することが可能です。
一方でローン残債がある状態では、競売にかけられる前に抵当権消滅請求を進める必要があります。
競売が開始されて自宅が差し押さえられると、売却そのものが難しくなるため、できるだけ早い段階で動き出すことが大切です。

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まとめ

抵当権消滅請求とは、抵当権が設定された不動産を取得した第三者が、債権者に対して抵当権の抹消を求める制度です。
この請求が認められるのは、あくまでも不動産を取得した第三者に限られており、ローン契約者本人である債務者からの請求はできません。
また、代価弁済との違いとしては、請求できる人の立場や取得経緯、さらに保証人や地上権取得者の扱いなどが挙げられます。
抵当権消滅請求は、物件が競売にかけられる前に行わなければならないため、タイミングを見極めて早めに対応することが重要です。
神戸市の不動産売却ならツナグ不動産がサポートいたします。
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